ラジオの時間

ラジオ

私の中高校生の頃の記憶にはいつもラジオがあった。
そして、ラジオは遠い街の、誰かが届けてくれる音の手紙のようで、私は好きだった。
私が好きなのは、話し手の語る落ち着いた、優しい言葉だった。
または、ラジオドラマの葛藤を抱きながら真摯に生きる登場人物の言葉だった。
それは時に、物語の風景に寄り添うささやかな音だった。

音の中の、語る人の思いや、その周りを流れる空気感が、心地よかった。

その、語る間の吐息や、小さな間などが感じられるほどの近さ。
風の音、雨音、木々のざわめき。
小鳥の囀り、電車の音、手紙を開ける音。

声と音だけで想像を膨らませる世界は、
映像が伴うものよりも、より鮮明に覚えていることさえあった。

実は、幼いころ、私は、様々なファンタジーの世界の物語を頭の中で作って遊んでいた。それは、ラジオを聴く時に想像を膨らませる時のワクワクした感じと同じだった。なので、ラジオという機械の中から届けられる音と、頭の中の物語は、いつも懐かしさを感じさせた。

今でも、ラジオドラマで聴いた時のような、ラジカセの向こうの、ラジオの電波の届く遠いどこかの街を想像する。
そして、その街で、色々と考え思いながら生きている登場人物を思い描く。 
そこからはじまる小さな物語を思い描く。

思い出の中で、ラジオは、子どもの頃の、ワクワクするような想像力の世界と結びつけてくれる。

そして、それは時に今の子ども達の言葉や遊びから素晴らしい発想が引き出された時の感覚とも繋がる。

私の中で、
音は色になる。
思いは色になる。

ラジオとともに旅をしながら。

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